2010.9.2(木)  S t o r y : 57

『その……言いにくいんだけど、昨日から熱が出てさぁ、
花火大会に行けそうになくて』

「え……」

たちまち全身から力がぬけていくようで、
ユイは必死で探した浴衣に目を落とす。
「そうなんだ。大丈夫?」

ユイは浴衣に目を落とす。
「そうなんだ。大丈夫?」

『たぶん風邪だと思うんだけどね。それよりほんとごめん! 
俺から誘っといて』
准汰が、なんべんも謝っている。

「ううん、気にしないで。仕方ないもん」

『もしあれだったら、俺のことはいいから。
ほかの誰かと花火大会に行っても、全然いいから』

「うん」

お互いの声が小さくなっていく。

行けなくて残念なのは、二人とも同じだ。
電話の近くで准汰を呼ぶ声がした。
たぶん准汰のお母さんだろう。准汰がその声に返事をして、

『じゃあ、今から病院に行ってくるから。また』

「うん。またね」

電話を切って、ユイはため息をついた。

せっかく見つけた浴衣を箱におさめた。
(また来年まで、バイバイ)

洋服タンスに戻していると、洗濯物をたたみおえた母が、

「それでしょ浴衣。着ないの?」

「うん。一緒に行く人が、行けなくなったから」

「そう、残念ね。お母さんと行く?」

「いい。行きたくない」

「せっかく浴衣を見つけたんだから、行ったほうが楽しいでしょ」

「だから、今日はもう、どこにも行きたくないの!」

ユイは口調に不満をのぞかせ、二階の自分の部屋へあがった。
母親は散らかった衣類を見ながら、

「もう、誰があと片づけするのよ」

わかりきった問いを口にしている。

ユイは自室のドアを閉めると、ベッドに倒れこんだ。
金魚の浴衣を、夏川くんに見てほしかった。

可愛いって、言ってほしかった。いっしょに花火を見たかった。

ぜんぶ自分のわがままだけど、わかっているけど、
一つも実現しなかったことが悔しくて、もどかしくて、

じわりと目に涙がたまってきた。

                        
                           
                             

つづく・・・・(9月9日 更新予定)

                
原作  清丘めぐみ
     小川 菜央
     田原麻衣子

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

開局35周年記念スペシャル
開局35周年記念スペシャル
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2010 冬編
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石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
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NATSUGOYA編
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♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12