2010.1.14(木)  S t o r y : 24

「おぉー、これがマツダスタジアムかぁ。でっかいなぁ」

スタジアムを前にし、准汰が素っ頓狂な声をあげる。

「うわー、おっきぃ・・・」

奈々もすっかり驚いているようだ。

「夏川君、来た事なかったの?」

ユイが不思議そうに尋ねる。

「テレビではよく見るけど、実際に来たのは初めてだなぁ」

「そっかぁ。あたしは幼馴染とよく来るんだよ。」

「へぇ・・・そうなんだ」

准汰は文化祭で見た男の顔を思い出し、曖昧な返事をしてしまう。

「とりあえず、中に入ってみようか菜々ちゃん」

「うん」

 三人は正面ゲートからスタジアムの中へと入る。
スタジアムの右手にはちょっとした展示コーナーがあり、
左手にはカープグッズなどを売っているショップがある。
三人はまず展示コーナーを覗いてみた。中では数名の見物客が熱心に展示に見入っている。

「どう、菜々ちゃん。この中にお兄ちゃんはいる?」

「ううん、いない」

「そっか・・・」

 その後、グッズショップの方も廻ってみたが、結局菜々の兄らしき人物は見つからなかった。
三人は肩を落としてスタジアムの外に出た。

「お兄ちゃん、どこにいるんだろ・・・」

 菜々が俯きがちに呟く。

「だ、大丈夫だよ。きっと見つかるから、ね。」

准汰が慌てて菜々を慰める。

「あ、今日はコンコースが開放されてるみたいだよ。行ってみようよ!」

「「こんこーす?」」

突然のユイの言葉に、准汰と奈々が声を揃えて問い返す。

「ふふ、きっとおどろくよ。こっちこっち!」

 そう言うと、ユイはスタジアム横の階段に向かって走り出した。

「ほらー!こっちこっちー!」

 階段の上からユイが子どものように二人を急かす。

「なんだよ、一体何があるんだよ。」

 准汰は菜々の歩調に合わせ、ゆっくりと階段を登りながら尋ねる。

「ほら、みて!」

ようやく二人がユイに追いついた時、ユイはそう言って自身の背後を示す。

ユイの示した方向、そこには球場を見渡せる広大な通路が広がっていた。

ユイ曰く、コンコースとはこの通路の事なのだそうだ。

 コンコースはグラウンドを取り囲むように続いており、
 外側にはシャッターこそ閉まってはいるが様々な飲食店が軒を連ねている。

「わー・・・」

「すげぇ・・・こんなに近くでグラウンドが見られるんだ」

二人はコンコースの内側へと駆け寄る。

コンコースは一階観客席の最後部ぎりぎりまで開放されており、グラウンドを一望できた。

グラウンドは芝生が瑞々しく青く輝き、

一台の芝刈り機がゆっくりとした速度で芝生を手入れしている。

「えへへ、すごいでしょ」

 ユイはさも自分の手柄のように誇らしげだ。

「この通路もね、今は全然人がいなくてお店も閉まってるけど、
          試合の時は人がいっぱいいて賑やかで、お祭りみたいなんだよ」

「へぇー」

 返事はするものの、准汰はこの光景を見るのに夢中なようだ。
ユイもそれを察してか、それ以上何も言わずにグラウンドを見つめる。

しばしの沈黙の後、

「お兄ちゃんにも見せたかったな・・・」

不意に、ぽつりと菜々が呟いた。その一言で准汰とユイは我に返る。
          准汰は一時でも菜々の事を失念していた事を恥じた。

「菜々ちゃん。ここにはお兄ちゃんはいないみたいだし、一旦、駅まで戻ろうか・・・」

「うん・・・」

 准汰の問いに奈々は素直に頷く。三人は駅に向かって歩き出した。

 駅への帰り道、三人は終始無言だった。広島駅の構内には交番がある。
 駅に戻るということの意味を、奈々は理解しているようだった。

(やっぱりこれ以上連れまわすのはまずいよな・・・)

 俯いて、准汰は一人考えていた。マツダスタジアムで奈々の兄を見つけられなかった以上、
これより先は警察に任せたほうが奈々のためなのだ。

(探してあげるなんて言っておいて結局これかよ・・・)

 頭ではわかっているが、准汰は自らのふがいなさが悔しかった。その時だった。

「菜々っ!」

 そう呼ぶ声がした。顔をあげると、前方から大きく手を振りながら男が走ってくる。

「あ、お兄ちゃんっ!」

 菜々は男を見るなり駆け出した。男はほとんどヘッドスライディングのような勢いで
    菜々に飛びつき、しっかりと菜々を抱きしめる。

 准汰とユイは驚愕した。まさか、こんな偶然があるのだろうか。

「よかった。本当によかった。菜々。ごめんな、一人にして」

「ううん。大丈夫。お兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒にいてくれたから」

「お兄ちゃんとお姉ちゃん?」

准汰とユイはゆっくりと男に近づく。それに気付き、男も慌てて立ち上がる。

「あ、菜々を保護してくれてた方ですか。あの、本当にありがとうございまし・・・」

男は二人の顔を見るなり言葉を失う。そんな男に准汰はにっこりと声をかける。

「どういたしまして。森田洋介君」

                       

           つづく・・・・    (1月21日 更新予定)

                
原作  M・B
     S・K
     R・S

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

                  

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

開局35周年記念スペシャル
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2010 冬編
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石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
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NATSUGOYA編
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♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12