2010.1.21(木)  S t o r y : 25

「いやー、びっくりしたー。
まさか菜々を保護してくれてたのが准汰と山岸なんて」

「こっちだって死ぬほどおどろいたっつーの。
まさか菜々ちゃんが洋介の妹とはな」

「本当。森田君に妹さんがいたなんて、あたし全然知らなかった」

「へっへー。可愛いだろ?自慢の妹だ。准汰、お前にはやらんぞ」

「いらねーよ。いや、妹としては是非とも欲しいけど」

「ふふっ」

四人で軽口を叩き合う。菜々は初め、急に親しげに話し出す
洋介と准汰に困惑していたが、洋介が学校の同級生である事を
告げると驚きながらもとても嬉しそうにしていた。

「それにしても」

と、ふいに洋介が切り出す。

「休日に二人でおでかけなんて、
随分と仲がよろしいですなぁ。准汰く~ん」

ぼっ!と、一瞬で耳まで真っ赤になる二人。

「ば、馬鹿!ちげーよ!俺と山岸が会ったのはたまたまで・・・」

「そっそうだよ!ほんとにただの偶然・・・」

「へぇ~。約束もしてない二人が、
この広い広島の地で偶然にも出会ったわけか。
それはもはや偶然じゃなくて運命だね。うん。間違いない。」

洋介の冷やかしに、顔を赤くして俯いてしまう二人だった。

「よし。じゃあ菜々。兄ちゃんたちはお邪魔なようだから、
そろそろお暇しようか。」

「お、おい」

「うん。お兄ちゃん、野球場見に行こうよ。あのね、
こんこーすがすっごくおっきくて広いんだよ。
お兄ちゃんにも見せてあげる!」

「へぇ、そりゃ楽しみだ。じゃ、そゆ事なんでお二人さん。
今日はありがとな。後は二人で楽しんでくれよ」

そう告げると、洋介と菜々は新球場へと歩き出す。
准汰とユイはその後姿を黙って見送っていたが、
去り際に菜々がこちらを振り返る。

「准汰お兄ちゃん、ユイお姉ちゃん。ありがとう。
また遊んでねっ」

輝くような笑顔でそう叫んだ菜々に、二人は笑顔で手を振った。

「よかったね、菜々ちゃん。無事に森田君と会う事ができて」

「ん、うん・・・」

相変わらず人通りの激しい広島駅を、二人は歩く。

「どうかした?何か元気ないみたい」

ユイは准汰の顔を覗き込む。准汰はふいに足を止めた。
    

「少し考えてたんだ」

「何を?」

「本当にこれでよかったのかなって」

「??何が?」

  ユイはキョトンとしている。准汰は俯いてぽつりぽつりと
                        話し続ける。

「菜々ちゃんの事。俺は菜々ちゃんの家族を探すなんて
     言って菜々ちゃんを連れ回したけど、
                それでよかったのかな。」

「・・・」

「本当は今日、ずっと考えてたんだ。
     やっぱり無理やりにでも警察に連れて行った方が
                良かったんじゃないかって。」

消えそうな声で准汰は話す。

「・・・夏川君は、どう思ってるの?」

「わからない。何が正しかったのか。
     どうするのが正解だったのか。わからないんだ。」

「でも、あの時はそうする事が菜々ちゃんのためだと
             思ったからそうしたんでしょ?」

「・・・うん。」

「だったら、それでいいんじゃないかな。」

「え?」

准汰は顔をあげてユイを見る。
       ユイは真っ直ぐに准汰を見つめていた。

「私ね、あの時夏川君が来てくれて、すごく頼もしかった。
  菜々ちゃんに、一緒に探してあげるって言った時、
    本当にすごいなって思ったんだ。
  私一人だったらどうしていいのか分からなくて、
   未だに泣いてる菜々ちゃんの前で
             おろおろしてたかも知れない。」
「そんな事・・・」

「ううん、本当だよ。あの時のあたしは、
    どうしようどうしようって焦ってばかりで、
    結局何も出来なかった。だけど、夏川君は違ったでしょ。
  菜々ちゃんのためを思って、正しいと思った事をすぐに
          実行した。それって本当にすごい事だよ」

「・・・」

准汰はユイの言葉に聞き入っている。

「ほら、『やらなくて後悔するよりも、やって後悔する方がいい』って言うでしょ。だから、
   もしも今日の事が夏川君の中で納得できないのなら、
      それを糧にして次に活かせばいいんじゃないかな。」

 ユイは真剣な眼差しで准汰から目を離そうとしない。

普段のユイのイメージとは少し違う、
       言いようのない力強さがそこにはあった。

「・・・そっか。うん、確かにそうだよな。」

准汰はユイの言葉をかみ締めるように、うんうんと何度も頷く。

「ありがとう山岸。なんだか、すっきりした」

「えへへ、どういたしまして」

ユイは照れながら、柔らかく微笑んだ。
(やらなくて後悔するよりも、やって後悔する方がいい、か)

「えと、じゃあこれからどうしよっか。もう解散する?」

ユイが問いかける。

准汰は心の中でもう一度繰り返し、そして覚悟を決めた。

「あのさ、山岸」

「え、何?」

しっかりとユイの顔を見据える。体温がどんどん上昇していく。
口の中はカラカラで、顔は耳の先まで真っ赤だった。
      しかし、その表情に迷いの色はもうなかった。

「よかったら・・・どこか、遊びに行かないか?」

                       

      つづく・・・・    (1月28日 更新予定)

                
原作  M・B
     S・K
     R・S

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

開局35周年記念スペシャル
開局35周年記念スペシャル
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2010 冬編
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石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
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NATSUGOYA編
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♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12