2010.1.28(木)  S t o r y : 26

「よかったら・・・どこか、遊びに行かないか?」

**** 言った。******

千秋に声をかけるときだって、
加奈子に声をかけるときだって、もちろん洋介を
遊びに誘うときだって、こんな風に一言を言うだけのことに
神経を集中させることはない。

 それはやっぱり、そこに特別な思いがあるからなんだと、
准汰は思い知った。

「えっと、その……」

 准汰が息をのむ。

「ごめん!」

「ええ?」

 あまりの勢いに、准汰の体から一気に熱が抜けていった。

「じゃなくて、あのね…」

 ぱたぱたと手を前で振り、ユイは頭の中で
ぐるぐると言葉を選ぶ。

「今度改めて遊ぼう?」

 そう言うと、准汰に背中を向けて電車乗り場の方へ踏み出す。
顔だけ振りむけて、ふふっと笑みを作る。

「またメール、するねっ」

「…おう」

 引き止めようかと思ったけど、笑い返して手を振った。

ユイは自分から、これからどうしようかと持ちかけたのに、
おかしい。だが、准汰の真剣な眼差しを見ていると、
その場に居られなくなったのだ。

 相手は正面から来てくれたのに、
自分は逃げるように立ち去ってしまった。
そのことにユイは、ちょっぴり心が痛んだ。

「ピンポンパンポン ピンポンパンポン・・・・」

 休憩時間を知らせるチャイムが校内に鳴り響き、
          生徒たちが思い思いに席を立つ。
授業が終わると、わあっと教室内は一気に賑やかになる。
そんな中、山岸ユイは一人席に
   座ったまま何やらうめき声のような声をあげた。

「どうしたのよ、ユイ。具合でも悪い?」

 席の近い神原千秋が、それに気付き、寄ってくる。
心配そうにというよりか、何やらけげんそうに覗きこんだ。

「違う、違うの」

 ユイが顔を上げる。その手には、プリントが握られていた。
いくつかの赤いバツ印が見える。

「それ、さっきの」

「わあああ、見ちゃだめっ」

あわてて机に隠したけど、ときすでに遅し。
千秋にばっちり内容を見られてしまった。

それは、ついさきほど数学の授業で返された
               小テストの答案用紙だ。

先週、抜き打ちでおこなわれ、
 みんなからはブーイングの嵐が巻き起こったのだった。

「見ちゃいけないなら、先に収めときなよー」

 千秋が笑う。ユイは、しゅんとしている。

「中学の頃は、けっこう数学好きだったんだけどな…。
        高校に入ってから難しくなっちゃった」

「まあね。小学校の算数だったころが懐かしいね。
 ユイは文系か理系か、どっちに進むとかもう決まってんの?」

 千秋は腕を組んで机にもたれかかる。
          ユイは首を横にふった。

「ううん。決まってないから、
      どっちでも大丈夫なようにしときたいんだけど。
          わからないままだと、後から大変そうだし」

「うん。ユイの場合、ギリギリになってあたふたしてそうだね。
                        目に浮かぶ」
「もう、千秋ちゃん! そこまで言わないでよ。」

「あはは、ごめんごめん。とか言いながら、
私もあんま点数良くなかったし。…ユイよりかは良かったけどさ」

「そうだね。5点差だけど」

 うしろから、天野茜がやってきた。
    少し悪戯な笑みを浮かべて手を差し出す。
     その手には、千秋の名前が書かれたプリントがあった。

「なっ。なんで茜がそれ持ってんのよ!」

「拾ったんだよー、そこで。机から落ちてたみたい」

 あわてて茜の手から奪い取る。

「千秋ちゃんも同じくらいだったんだね」
            ユイが安堵の笑みを浮かべた。

「ちょっとユイ。そこは安心していい所じゃないんじゃない?」

「私はたまたまだよ。ほら、今回のテストは
    全体的に良くなかったって先生も言ってたし…」

 千秋が、しどろもどろに言葉を紡ぐ。
 いつもはっきりとしたもの言いで言い放つ千秋にしては珍しい。

「うー。じゃあ茜ちゃん教えて」

「いいけど、人に教えるのヘタだよ…そういうのは先輩に
   聞いたらいいんじゃない? ほら、年上だし、塾行ってる人とか居るし」

「塾か…もし私が入ったら、今より自信持てるかな」

 ユイがひとりごとみたいに呟く。

「なんなら千秋も行ったら?」

 ちらっと、千秋の手元を見やる。
        今日の茜はちょっぴり小悪魔だ。

「私は、もうちょっと後でいい。今は何も考えずに、
              高校生活を堪能したいわー」
          千秋は顔をそらして、ため息をついた。

「先輩…か」

 いつもならにこにこしながら二人の
 やり取りを見ているであろうユイは、どこかぼーっとしている。

「そうそう、たとえば海野先輩とか、勉強してそうじゃない?」

「あ、でも全然テスト興味なさそうな人も居るじゃん。
                  たとえばさー…」

 千秋と茜は軽音学部の先輩の話を始めた。
ユイは、二人のやりとりを聞きつつ、たまに相槌を打つ。
でも、なぜか耳に入ってこなかった。

 その日、家に帰ってからメールを打った。

『ねえねえ、隼人くんは塾とか行ってる? 
       野球部で忙しいから行ってないかな……』

 メールの送信先は鷹西隼人だった。
先輩、と言われて思い浮かんだ隼人に、相談をしてみる。

 しかし、隼人は塾には行っていない。
野球部の練習は忙しいが集中力と手際の良さがあり、
勉強の効率が良いのだ。いつも復習していて、
授業についていっている。まさに文武両道というやつである。

『行ってないよ。勉強のことで悩みでもあるのか? 
     また、前みたいに一緒に勉強したいけど、
こんど練習試合もあるし、なかなか近いうちは
               都合あわないかもなあ』

 中学の頃は、たまに勉強会と称して隼人がユイに勉強を
         教えることもあった。
 高校に入ってからは、一度もやっていない。

『ありがとう。練習試合がんばってねp(^▽^)q
 塾に行ってみようかなーと思ってるよ。
    どこかは決めてないけど。1年生のうちは早いかな?』

『そんなことないんじゃないか? 俺も受験用には、
     不安な教科だけ行こうかと思ってる。
   従兄弟が前に通ってたって言ってたとこがあってさ。
                      たしか名前は…』

そこには、いわゆる塾とは印象の違う
       個別指導という文字が、書かれていた。

なんとなくユイは、
    その言葉と自分のイメージとの違いに興味を持った。
                

                       

         つづく・・・・ (2月4日 更新予定)

                
原作  M・B
     S・K
     R・S

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

2011 夏編
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35周年 秋編
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35周年 恋夜空編
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開局35周年記念スペシャル
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2010 冬編
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石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
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NATSUGOYA編
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♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12