2010.2.10(水)  S t o r y : 28

「で、その個別指導の教室に通うことにしたんだ?」

コーヒー牛乳を手に、千秋が問いかける。

「そう。お父さんもお母さんも、いいよって言ってくれたし」

机の上に弁当をひろげ、ユイが答える。

「でも、部活は出るよね?」

「もちろんよ。だから週に一日だけ通うんだ。
         苦手な教科だけ見てもらおうと思って」

「そっか。次のテストは私も負けてらんないな!」

「ふふっ。私もがんばるからね」

 握りこぶしを作り、にっと笑いかけた。

「そういえば、ユイ。こないだ夏川くんと、
         森田の妹を助けてあげたんだって?」

「うん、奈々ちゃんね。なんで知ってるの?」

 思わぬ話題を振られて、ユイは目を丸くした。
あの日、准汰を置いて先に帰った後ろめたさもあり、
だれにも話さず、心の中におさめていたからだ。

「森田と電話してるときに聞いた」 

「千秋ちゃん、森田くんと電話で話したりするの?」

といいつつ、ユイは頬が赤くなった。

「するよ。べ、べつに深い意味はないけど。普通の会話だよ」

 まっすぐ問いかけてくるユイに、千秋は照れくさそうに答えた。

「そうなんだ」

准汰といっしょに奈々を連れて、
     洋介を探しまわった先日のことを思い出し、

(夏川くん…)

ユイは、心の声でよびかけた。

「さみい…」

准汰は大きなスポーツバッグを肩から下げて、
足早に家路をいそぐ。肩をすぼめてポケットに手をいれ、
マフラーに口も鼻もうずめて歩いている。

「あれ」

その教室からもれる明かりのほうへ、
    なにげなく顔をむけた准汰は、歩道に立ち止まった。

「山岸?」

まぶしい光の中には、まちがいなくユイの姿がある。

ふりあおぐと『個別指導・Axis』と大きく書かれてある。
ユイがここに通っているとは知らなかった。

「部活も勉強も両立してんだな。…よし、俺もやるぞ」

准汰はがんばっているユイを応援したくなり、
ガラス窓にマスコットキーホルダーに
         似せたキャラクターを描いた。

いつかユイにあげたキーホルダーだ。そして、
        かたわらにはサッカーボールも描いた。
となりに一言、メッセージをそえる。

〈がんばれ!〉

さかさまの鏡文字だし、指はかじかんでいるし、
メッセージは歪んでしまった。

准汰は自分も元気をもらったような気分になった。
すぼめていた肩をそらし、足どりもかるくその場を立ち去った。

                       

         つづく・・・・ (2月18日 更新予定)

                
原作  M・B
     S・K
     R・S

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

2011 夏編
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35周年 秋編
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35周年 恋夜空編
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開局35周年記念スペシャル
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2010 冬編
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石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
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NATSUGOYA編
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♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12