2010.8.13(金)  S t o r y : 54

(たとえ話としてなら、いいかな)

そう思ったら、自然に言葉が口からでた。
「勉強のことじゃないの。たとえば……」
「おう」
「たとえば夏川くんに恋人ができたとするじゃない?」
「お、おう」

恋人ということばに准汰はうろたえたが、かまわずユイが続ける。

「その彼と彼女は学校も違ってて、おたがいに予定が合わなくて、
なかなか会えないとして、
そんなとき彼女が距離を置きたいって言ってきたら、
夏川くんならどうする?」

  うんうんとうなずきながら聞いていた准汰が、
「それは辛いな」
  といって、こうつづけた。

「おれはショックを受けるよ。
自分の気持ちだけが先行してたのかなって思うだろうな」
といいつつ准汰は、
その彼と彼女を、
なんの妨げもなく自分と山岸ユイに置き換えて考えている。

(うん、たしかにショックだ)

と、あらためて思った。

そんな准汰の胸の内などわかるはずもなく、ユイは隼人
と詩織に思いをかたむけ、
「そうだよ……ショックよねぇ」
つぶやいている。

「その彼と彼女って、だれのことなんだ?」

「だれって、たとえばの話だって」

 口調にいきおいをこめて、ユイは言いかえしている。

「それって、山岸自身のことだったり?」

「え、ちがうよぉ!」

「本当に?」

        と念をおす准汰が意外で、

「どうして私のことだと思うの?」

けげんそうにユイが問いかえす。

「いや、山岸がそういうことで悩んでるのかと思ったけど、
                そうじゃないなら、いいんだ」
「私のことじゃないよ」

「たとえばの話だもんな」
         と准汰が含みのある笑いをうかべた。

「そう。たとえばの話」

准汰の口が、なにか言いたそうにしている。
   ユイが言葉をまっていると、
      「… その … 山岸に何かあったらさ」

「うん?」

「いつでもメールしてこいよ。
     そういう、恋愛のことでも相談にのるからさ」

これを聞いて、つい目の前の准汰が五歩もしりぞいたような気がした。
ユイはとっさに返すことばがなかった。

「やっぱり俺じゃ、だめかな」

「そんなことないよ!」

 ユイがあわてて否定し、それから小声で付け足す。

「うれしい。ありがとう……」
            (夏川くんに恋愛相談か)
できるわけがない。好きになりかけてる当人に恋愛相談なんて。

友情から恋に育つかもしれないと期待していたけど、

(夏川くんにとっての私って、やっぱりただの友だちなんだよね)

友だち、友だち、友だち……夏川くんの心のど真ん中に、
友だち以外の何者でもない私が、デーンと居座ってるんだ。

よし、友だちで居てやるっ。

「私も待ってるよ、相談!」

むりやり気分を切りかえ、ユイがあかるく応じる。

「勉強のことも恋愛のことも、なんでも相談し合おうね。
                 わたし、ちゃんと聞くから!」

「まぁ、相談しなきゃならない悩みがないことが一番だけどな」

「そうよね。あかるく前向きでいれば、悩みなんてなくなるかなあ」

なんて会話をはずませながら、
  ユイも准汰も思いは別々のところをさ迷っていた。

                          
                           
                           
                             

つづく・・・・(8月19日 更新予定)

                
原作  清丘めぐみ
     小川 菜央
     田原麻衣子

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

2011 夏編
2011 夏編
再生する
35周年 秋編
35周年 秋編
再生する
35周年 恋夜空編
35周年 恋夜空編
再生する
開局35周年記念スペシャル
開局35周年記念スペシャル
再生する
2010 冬編
2010 冬編
再生する
石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
再生する
NATSUGOYA編
NATSUGOYA編
再生する
♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12