2010.8.19(木)  S t o r y : 55

喫茶店を出てゲームセンターで遊んだあと、すこし歩くことにした。
街の中は人が多いので、平和公園のそばを流れる元安川のほとりを歩いた。

川にそって曲がると、原爆ドームが見えてきた。

准汰は、横目でちらりとユイを見た。
ユイは口もとに笑みをうかべ、水面の魚をのぞきこんでいる。
顔にかかる髪を耳にかけた。その細い指から目を離せない。
(あの手を、だれか握ったことはあるんだろうか。
あの髪や唇に、おれ以外の誰かが触れたことはあるんだろうか)

ユイが自分に話しかけているのに気づいて、
え? と聞きかえした。

「あの船に、乗ったことある?」

川をさかのぼる遊覧船を指さし、ユイが言う。

「いや、乗ったことないけど」

「乗ってみたいね。楽しそう」

とユイが笑いかける。

可愛くて、まともに見ることができない。
准汰はさりげなく視線をはずした。
その視線の先に花火大会のポスターが貼ってあり、

「ねぇ山岸、この花火大会に、一緒に行かない?」

「花火大会?」

ユイもポスターに目をとめた。
准汰たちの家のちかくでは、まいとし夏になると花火大会がある。
かなり知れわたっているので見物客も多い。

「もちろん俺でよければ、なんだけど」

「うん、いいよ。一緒に行こう」

ユイはこころよく了承してくれた。それからすこしおしゃべりをして、
准汰はユイを家まで送りとどけた。

帰り道、さっそくユイからメールが届いた。

『今日はとっても楽しかったです。ありがとう♪ 
花火大会、楽しみにしてるね』

准汰は喜びを抑えきれず、ひとりでにニヤついてしまう。
すれちがう人たちが、けげんそうに見ていた。

(山岸とは、こうして少しずつ距離をちぢめられたらいいんだ)

 なにを悠長なことを! と徹に怒られそうだけど、
これが自分では精一杯なのだと、准汰は開き直ることにした。

                          
                           
                           
                             

つづく・・・・(8月26日 更新予定)

                
原作  清丘めぐみ
     小川 菜央
     田原麻衣子

協力 比治山大学現代文化学部 

監修 吉本直志郎

 
(やまぎし ゆい) 16歳(高1)

広島市内の県立出澪(でみお)高校に通う女の子、クラブは軽音楽部。


(なつかわ じゅんた) 16歳(高1)

広島市内の中学校で山岸ユイと同じクラスだったが、サッカーに専念するためユイとは違う学校に進学。

2011 夏編
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35周年 秋編
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35周年 恋夜空編
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開局35周年記念スペシャル
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2010 冬編
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石井杏奈着うたPR
秋編(石井杏奈着うたPR)
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NATSUGOYA編
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♪「がんばるけん~」
 作詞:石井杏奈 & tetsuhiko
 作曲:tetsuhiko
 石井杏奈(いしいあんな)
 スターダスト音楽出版所属
 アクターズスクール広島9期生
 Birthday : 1994.02.12